2017年12月22日金曜日

[Kerrang] BABYMETALは不滅

[Kerrang] BABYMETALは不滅

(2017年12月20日号)






広島グリーン・アリーナ
2017年12月2日〜3日

評価:最高

日本のメタル・アイコンがスゥメタルの誕生をこれまでで最も壮観なショーで飾った

記事:ポール・トラヴァース

大切な誕生日の贈り物として最もふさわしいものは何だろうか? iPhone X? 子馬? 二日酔い? 状況がどうであれ、10メートルの炎が夜を照らし出し、コープスペイントをしたメタル・ミュージシャンのグループが君の死を記念する曲を演奏する中、フードをかぶった僧の一群によって、儀式的に磔にされることはまずあり得ない。そして、その後で、14,000人の熱心な信者の前で、君が復活し、神として祀られ、天に昇ることはさらにありえない。残念でした。

だが日本ではやり方が異なる。特にその主体がBABYMETALの場合は。日本では成年に達し、正式に成人となることは一大事だ。これは18歳ではなく、20歳の時に起こり、最近は出席率こそ下がっているが、これは成人の日の式で記念される。BABYMETALのリード・ボーカリスト、スゥメタルこと中元すず香は、この入り口に至り、その生地である広島の二晩のコンサートで、バンドは想像できる限りの最も壮大なかたちで、この事実を祝った。BABYMETALはこの誕生日の盛大なお祝いを「Legend-S-洗礼の儀XX」と名付けることにした。当然の如く。

理想的な状況で始まったわけではない。二公演の数時間前に、シンガーのユイメタルの病気が重く、参加できないという話が伝わってきた。延期も考慮されたが、開催することが決定した。ファンが日本中あるいは海外からこの特別なショーのために旅行してきていたのだからなおさらだ。ショーの前に配られた公式な告知によれば、「今回出演できないYUIMETALの思いも含め、SU-METAL、MOAMETAL、スタッフ一同、お集まり頂いた皆様と一緒に、「LEGEND – S - 洗礼の儀 - 」の会場がひとつ「THE ONE」となるような公演を目指して参りますので、参加される皆様、そしていつもBABYMETALを応援してくださる皆様のご理解、ご協力を宜しくお願い申し上げます。」とある。

「THE ONE」は、BABYMETALのファンクラブを指し、最初のショーはその会員限定だった。だとしても、需要はとても大きく、チケットはくじ引きで配給された。巨大なグリーン・アリーナの二公演で、14,000人を前に演奏することになったが、応募者数はその五倍に及んだ。それぞれの晩にバンドが演奏した際には、チケットのないファンが、文字通りロビーの窓に耳を押しつけて、何とか聴こうとする姿があった。

[キャプション] ダウンロードの犬は戦慄すべき交配の対象となった。

[キャプション]モアメタルと君のおばあちゃんのランプ、どちらの方がおしゃれ?

[キャプション]最近は杖が見つからないと言ったのは誰だ?

[キャプション]BABYMETALはステージのセキュリティにとても厳しい

一方、その暗喩的な金色のチケットを握りしめた、ラッキーな者たちの行列は、同じような神秘的なしるしで覆われたローブと、これに合った金属の護符、それにヴェネチアン・マスカレード・マスクとコンボイ(「トランスフォーマー」シリーズのキャラクター)を交配したキツネ版のようなマスクをまとっていた。正直なところ、The Oneは儀式の一部であり、それぞれがチケット一枚一枚に対して与えられる三つの神器であると説明されるまで、これは不気味に映った。コード・オレンジ(緊急事態)では手に入らないよね。

二日目は誰でもチケットを買えば入場可能だったが、コスチュームを着て参加するという点は変わらなかった。BABYMETALのライブ体験は、ロックであると同時に演劇であり、即興の機会は厳密に制限されている。だが、結果は圧倒的に壮観だった。地球の人々が絶望に襲われているという、巨大なスクリーン上のアニメーションと語りで始まった。幸いなことに、フォックス・アイが輝く20XX年(地球人の時代)に、新しい女神が現れて希望が取り戻される。これに合わせて、煙に包まれ、ローブをまとい、杖を握り、件のノストラダムスを演じたJUDAS PRIESTのロブ・ハルフォードのより大予算の孫娘のように見えるスゥメタルが、巨大なフォックス・ゴッドの口から登場した。

六人のたくましい、キツネ頭の人物たちが、六つの巨大なキツネの頭に囲まれたプラットホームにつなげられた巨大な鎖で、会場の反対側のステージに向かって、スゥメタルをひっぱっていく。(六という数字、そして特にオオカミのようなキツネたちは、BABYMETALの神話で目立つ。)そこにたどり着くと、スゥメタルがその杖をかざし、火柱が上がり、爆発が起こり、キツネ男たちが巨大な太鼓を叩いて、エピック・ファンタジーの戦争映画のサントラのようなゴロゴロという音を創り上げる。これが君の頭に浮かぶどんなバンドよりもすごいイントロとなった。

音楽を提供する神バンドはおおよそその名を知られていないが、"イジメ、ダメ、ゼッタイ"の大仰なDragonforceスタイルのパワーメタルの演奏だろうが、"メギツネ"のダンス・メタルの乱戦を創り上げようが、"BABYMETAL DEATH"の切り裂くようなリフで、METALLICA以上にMETALLICAしようが、彼らは圧倒的だ。フロントに立つ女の子たちは、間違いなく中心となっているが、神バンドのターボチャージされたエンジンがなければ、すべてはぎくしゃくしてしまい、うまく行かないだろう。

[キャプション] 誰かがシャワーを浴びている間に換気扇を回すのを忘れたようだ

観客もその役割を果たす。これは日本で行われたので、曲の間には、ものすごい完成に続いて、心奪われた沈黙があるが、また"ド・キ・ド・キ☆モーニング"のここぞというポイントでジャンプしたり、"META メタ太郎"で「ウォー」と歌い返したり、"Road of Resistance"がスピーカーから流れ出すと、六つのこれに見合ったサークルピットを創り上げたりと、観客も同じように振り付けされているように見える瞬間があった。

ステージのバンドによる演奏も、とにかく驚くべきものだった。スゥメタルがリード・ヴォーカルの大部分を提供したが、モアメタルは基本的に二人分のダンスと歌を担当し、疲れ知らずだった。"Karate"には"Karate"の動きがあり、"紅月"では側転のある振り付けられた戦いがあるが、モアメタルはスゥメタルの成長と過去の自分との戦いを表すより大人のステージ衣装をまとった。そしてキツネの戦士たちが"No Rain No Rainbow"で戻ってくると、7メートルの高さでイカリングをあぶるだけの火薬が用いられていた。この曲は、スラッシーなソロを伴い、ストリングスとピアノを加えて、ものすごい、圧倒的な喝采を浴びた。

だが最高の部分は最後にとってあった。神秘的な小道具と火柱の間でヒロインが儀式的に犠牲になる中、"BABYMETAL DEATH"はさらに強烈なものとなった。だがそれで終わりではなく、語りが戻り、どのように救世主が新しい女神として蘇り、その双肩に希望をもやし、これを担って天へ昇るのかを説明する。「希望の光はフォックス・アイを通して輝く」と語りは続く。7,000のマスクから輝き、点滅する光によって闇が引き裂かれる。これはThe Oneの最終幕の到来を告げる魔法のような瞬間だった。

今度は装飾的なローブと頭飾りをまとって、モアメタルと共に、アリーナを横切りながら、「これは私たちの歌、これは私たちの夢」とスゥメタルは歌う。二人はステージの一番上に上がり、壁が開いて、その向こうに階段が伸び、BABYMETALは光の中へと上がっていき、神となるのだ。

かくしてBABYMETALにとってこの章が終わった。何かを控え目な形で行うことのないバンドとして、君は壮観なものを予想するだろうが、この二公演は、あらゆる荒唐無稽な想像力をしのぐものだった。このような大勝利の後で、どのようにBABYMETALが先へ進むのかは、フォックス・ゴッドのみが知るのだろうが、今やバンドに女神を抱え、彼女たちがダウンロード2018に登場するとき、絶対的な神々しさ以上のものを期待できる。

▼元記事
Kerrang! 2017年12月20日号






2 件のコメント:

  1. 翻訳、ありがとうございます。読んでいて、目頭が熱くなりました。

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  2. ダウンロードフェスに期待を高めて絞めてくれてありがとうね(^.^)

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